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つまり恋人さんじなくてソラちん自身が淋しい
んだねだから不安になるんだねRWMの仕事を
していると頻繁に会うことはできないもんね
そうなんだよ会いたくて会いたくて堪らなくて
も会うと今度は離れないといけないでし? ずと一
緒にいるわけにはいかないもんそれがすごくつらいん
だよ
RWMの仕事を勧めたのは恋人さんなんだよね
ラちんが能力を遺憾なく発揮できる職場だからて考
えてくれたんだよねアタシは遠距離恋愛の経験がな
いけどRWMの社員でいる限り近くにいてもなか
なか会えないてことはいえるかも
そうなの?
距離は関係ないんだよ
 職人とソラは初対面だダブルがソラといけん仲良
く会話しながらカフへ来てしかもソラがダブルの好
きなマシマロ入りココアを注文するという事態に職人
は出くわしたどんな修羅場が展開されるものかとダブ
ルは身構えていたのだが
 苦し紛れにダブルが勢いよくソラを職人に紹介すると
ソラはあなたがウサギ型催涙弾装置を作ている職人
さんと目を輝かせなんて可愛いんですかと目を
潤ませついでに相談があるんですと職人の両手を
つかみみるみるソラの口調はため口になるという始末
 なまじ隣りに悪評高いダブルがいるだけに見かけの
愛らしさに加えてソラの中ではあの匠の職人
職人の評価はうなぎのぼりになたのだろうそれでな
くとも職人はダブルと違て社員の評判はとても高い
のを忘れていた
 まあ杞憂で済んでよかたよと職人の評価を上げる
のに自分がひと役買ているのを不満に思いつつダブ
ルは胸をなで下ろす
なら結婚しても意味がないてことかなRWMをや
めることはできそうもないし状況はまたく変わらな

いわけだし
ソラちんはどうしたら安心できると思う
え?
恋愛の究極形は心中なんだよ
実はいとき考えたことがある
やらなかたのは情報調査部のお仕事が楽しいからだ
よね
ソラちんはRWMが好きなんだね恋人さんとは
別次元でたら子どもをつくるていうのはどう
かな
 おいおいおいダブルは目を丸くしたどういう話に
ていく気なんだソラちは職人やぼくとは違
見た目が実年齢なんだよ? 十代女子にいきなり子ども
を産めとはソラもあからさまにうろたえていた
さすがにそれは
できないよねつまりソラちんが子どもだからだ
たら大人になればいいんだよ精神的に大
人になればソラちんも少しは安心できるかもね
会いたいばかりじなくてたまに会える時間をいま
までの何十倍もの濃度にすればと気持ちは落ち着
くよ
 なかなか含蓄のある言葉だ自分に対しても含む
ところがある言葉に聞こえてダブルはこそり席から
離れたこれ以上聞き続けていると精神上よろしくな
 そこにちうどモジモジ頭の営業部員がド
からカフへ入てきた地球出張から帰たばかりの
ようだ黒い鞄からは水ようかんとおぼしき黒色直
方体らしき検体がはみ出ていたモジモジ頭がさら
にモジモジに毛羽立ていた目は虚ろにさまよ
ているかなりの疲労度のようだ
 ダブルはむふんと笑うとモジモジ頭の営業部員
の前へ走り出た
モジ毛くん発見
 ダブルはモジモジ頭の営業部員の脇腹に自白剤を
注射しようとしたそれをモジモジ頭の営業部員が

黒い鞄で防御するさの動きというより条件反射の
動きだいきおいで検体がばらばらと床に落ちたその
音で我に返たのかあああ検体がとモジ
頭の営業部員が情けない声を出す
 かがみこむモジモジ頭の営業部員の背中にダブ
ルは再度自白剤を注射しようとするどく手を突き出し
その手をモジモジ頭の営業部員がぱしりとつか
だからやめてください申し訳ありませんがおれ疲
れているんで容赦できませんよ?
 くそうモジ毛の癖に生意気な舌打ちをしようと
してダブルは眉をあげるどうもモジモジ頭の営業
部員の様子がいつもと異なるように感じたモジ毛く
平静を装ているけどさああこいつは装てい
るだけだななにがあたんだろうそりきまてい
るだろうこのタイミングだそうだよねこのタイミ
ングだもんね
 ダブルはモジモジ頭の営業部員を下からすくいあ
げるように見上げた
お前水ようかんただろう
どうしてそれを!
てないよむしろ歓迎だで? どうだた? 
エヘヘ食べた感想をくわしく教えてくれ大事なこと
なんだよ水ようかんにまつわる一件を解決する手
立てになるからね早く報告書を仕上げることにつなが
るぞ
本当に!
 うんうんとダブルはうなずくそれなら仕方がない
ですよねえとモジモジ頭の営業部員は顔を崩した
よほどダブルの早く報告書を仕上げるという言葉が
利いたらしいどれだけ水ようかんで地球上が混乱
しているのかうかがえる反応だ
身体中を風が吹きぬけたような感覚になりました
詩人?
草原に立ている気分です森に包まれているような
気持ちにもなりましたね
 実りの秋を迎えた森木々は黄色や茜色の葉に包まれ

>

足元は落ち葉でいぱいだその木々の合間を小さな虫
がふわりと通り抜けていく尻に綿毛のような白いもの
をくつけた虫だ雪虫だ雪虫が木々の間を上下左右
に動き回る雪のように動き回るいつしか無数の雪の
ように雪虫が飛びまわりその後ろで真赤な葉がゆ
たりと地面に落ちる木の実は赤く実り日の光を受け
てつややかに輝き周囲の空気までも穏やかな赤色に染め
上げて
 ほうとダブルは息をはく
モジ毛くんは意外とロマンチストだたんだねえ
水ようかんからそこまでの共鳴を受けるとはオレ
とは大違いだよほど幸せな幼少期を送たに違いない
その分いま苦しんでいるてとこかね
お言葉ですがおれはRWMの仕事が大好きなんです
よ?
マゾヒストのいうことは奥が深いねえぼくにはつい
ていけないよ
月面から一歩も外へ出ないで実験ばかりしているあ
なたにいわれたくありません
え? それてぼくが地球へ行てもいいてこと?
 あいやそのとモジモジ頭の営業部員はくち
ごもるもちろんダブルも言葉のあやで口走ただけだ
地球へ降りるつもりは毛頭ない地球に降りてなにをし
ろというんだよ大量殺戮行為か? そいつはさぞ地球
も喜ぶことだろうな
お前は絶対に地球に降りるな降ろすなと会長か
ら厳命を受けている
 野太く張りのある声が頭上から聞こえた
 タフだ
いいところにモジ毛くんも水ようかんを食べ
たことだしタフも食べてみてよそれで感想を聞かせ
てくれ生デタは多いに越したことはないからね
フがなかなか例の28人分のデタをくれないから困
ているんだぞヘリウムくんみたいに2万個体も情
報が欲しいだなんていわないから安心して
断る
怖いの?

そうだ
 即答だこれは意外な返答だタフならオレは
甘いものが苦手なだけだとか地面に落ちているもの
を食えるかと反論するかと思ていた
忘れたのか? 水ようかんはオレが持てきた検
体なんだぞどんなふうに発生してどんなふうに存在し
ていたのかこの眼で見てきたんだとても食う気など
起きんわ
 野生の本能というやつだろうか野生弾かれた
ようにダブルは顔をあげた
ねえ水ようかんを食べているのは人間だけなの?
 ほかの動物が食べている目撃証言とかはないのか?
どうしてオレの言葉を聞いてそれを思いつくんだ!
人間だけなんだね?
水ようかんの脇をシカの群れが通ていたが
見向きもしなかたなまるで見えていないようだ
そういえばアリも素通りしていたな甘い匂いがしただ
ろうに妙だな
見えていなかたからだよアリにもシカにも水よ
うかんは見えないはずだぼくの説によると人間にし
か見えないんだよ
はあ? 人間にしか見えないものがどうして触れるん
オレは水ようかんを手づかみにして回収をして
月面へ持ち帰たんだぞヘリウムだて測定をしたん
だろうが人間にしか見えないものがどうして数値とし
て現れるんだ
人間である我々が知覚するからだよ知覚
るから触れるんだよ機械も人間が作たものだからね
測定したのも人間だしなふふん測定値というかたち
をとることは可能だろうね
またわけのわからんことを
 そうだとダブルは手のひらを叩いた
いまから実験をやるんだよタフもモジ毛くんも見
においでよソラちや職人も誘てさラリ
多いほうがいいからな証人は多いにこしたことはない
さあさあラボへ行こう
オレはお前らを連れ戻しに来たんだ!

うどよかたじ
 さあさあとダブルがモジモジ頭の営業部員の背
中を押そうとしたときだモジモジ頭の営業部員の
携帯電話が鳴発信者を見てモジモジ頭の営業
部員は青ざめる携帯電話に向かてしきりと頭をさげ
つつダブルには見向きもせずに管理営業部へと走り去
てい
 うう逃げられたさすがにモジ毛を1時間近く拘
束するのは無理だろうそうか駄目か地上へ降りて
社外の人間にPRするモジ毛くんだからこそ実験に参
加してもらいたかたんだけどな残念
 それでもまあ職人にソラそしてタフがいれば所属
部署もひととおり揃ている
で? なんの実験をやるんだ?
 うんとダブルは満面の笑みをタフに向けた
もきとわかるまい理解できなくともその目で見れば
納得するだろうそうだよねまあ一応いてみるか
デイジルドの実験だよ
 ほうとタフは目を丸くしなんだそりと予想ど
おりの答えを返した
               3 へ続く NEW NEW
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