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ダブルくん
 職人に背中から抱きつかれてダブルは我に返
 いつの間にかテブルの上にはマシマロ入りココア
とバナナチコパンケキとジマンポテトとドイツ
のアルトビルが並んでいた
 無意識に頼んだのかなオレが頼んだのはマシ
マロ入りココアだけだたはずだがううん食べたい
て気持ちが言葉になカフスタフに伝わ
いたのかもしれないねえ
あたしが頼んだんだよ
 職人がダブルの隣りに座る満面の笑みでダブルに顔
を向ける職人の長いふわふわの髪が揺れたサバンナ
の草原のようだ
ダブルくんが食べたそうだなて思
よくぼくがカフにいるてわかたねえ
ダブルくんにはアタシがつけたGPSがついてるから
! いま何かさらりととんでもないことをいわな
た!
 ダブルが職人に向き直るのと職人の前にみたらし団
子とアツアツのほうじ茶が並ぶのが同時だ職人は
わあと頬に両手を当ててみたらし団子に見入る
食べないの? 冷めちうよ
として職人さあアンノウン係のラボの中
に盗聴器とか仕掛けた?
うんと40個くらいつけた
冗談でいたのにマジかよ!
嫌だ
 職人は不思議そうにダブルにたずねたまるで肩こ
りで悩んでいる人間の肩をもんだのに迷惑そうな顔をさ
れて不可解だみたいな顔つきだこれはなにをい
も無駄だとダブルは瞬時に判断をするそれにしても
40個も仕掛けられていたのにまたく気づかなか
とはオレとしたことがとんだうかつさだ
嫌だ

 職人はもう一度たずねるダブルはマシマロ入りコ
コアを口に含むどうだろう? 意外だなうんさほ
ど嫌じないねえむしろ職人にそこまで独占欲がある
とは知らなかたないつ盗聴器をつけたんだろうねえ
水素やリチウムがうろうろしているラボに盗聴器を40
個もつけるなんて簡単ではなさそうだがな少し前まで
はヘリウムくんだていたしあいつなら気づかないわ
けがないだろうしな測定の邪魔になるからな
とダブルはカプを置いた
とするとそれ職人とソラちが友だち
になたあと?
うん
 なるほどヘリウムくんの差し金かあいつ
白そうな顔をしてけこうどろどろした人間関係がお好
みなんじないのかさすが地球のすけこまし野郎だね
はあやれやれ
 ダブルは横目で職人を見た職人は頬を赤くしてみた
らし団子を頬張ていた小さな頬がリスのように膨ら
んでいる眉が緩く下がていたダブルはマシマロ
入りココアからドイツのアルトビルに切り替えて
ちがそうならとテブルに頬杖をついた
職人さあいまでもウサギ型催涙弾の生産は忙し
いの?
今日も300個体納品したよ
ひとつひとつ職人が最終確認をしているんだ
もちろんだよウサギ型催涙弾は特に慎重に扱
わないといけないからね誤爆とかないように製品の
精度には気を使うよ
 ダブルはぐびりとドイツのアルトビルを飲んだ
特に慎重に取り扱うねえ
職人が全部最終確認をしているのはウサギ型催
涙弾だけなのかな?
そんなことないよシロクマ型無効化装置もそ
うだしスイカ型情報収集機とかドロプ型環境変
換機ゼリンズ型睡眠弾も大好きだよ
みんなみんな大切な装置なんだよ
 頬にみたらしのたれをつけて職人は微笑む微笑むだ

全部最終確認をしているとは肯定しなか
 ダブルはドイツのアルトビルをもうひと口ごくりと
飲んだ
 いくら職人がヘリウム並に作業効率を上げられるよう
自身に薬物投与していたとしてもそれこそ1日平均1
万個体の量産装置を生産しているのだすべてを職人ひ
とりで最終確認することは無理だ一般常識とは異なる
技術開発部の常識で考えても無茶だ
 職人がすべて最終確認をひとりでやていると認
めた装置はウサギ型催涙弾だけだそしてウサギ
型催涙弾は大人気で地球上にいる社員のほとんどが
装備している装置だ
職人は地球が好きだもんねえ暇さえあればいつも眺
めているしな
ダブルくんだてさき見てたね今日の地球も元
気そうだよね
地球のどこが好き?
 職人がみたらし団子を食べる手を止めるとんと
した眼差しでダブルを見つめたすら口をあけてい
小さい口だダブルはフクにジマンポテト
を刺すと職人の顎を指でつかんでマンポテト
を職人の小さな口に入れた職人はごく自然にゆくり
と口を動かす
美味しいね
 ダブルもジマンポテトを口に入れるコンの
塩味が利いたほこりとした食感のポテトだ
マンポテトをドイツのアルトビルで喉に流し込み
ダブルは職人の顎から手を離す
あねえぼくと地球ちが好き?
 職人はにこりと笑うとみたらし団子の串を差し出し
今度はアタシがお団子を食べさせてあげるお返し
だよ
 ダブルもおとなしく口を開けたダブルの口の中はみ
たらし団子とジマンポテトとドイツのアルトビ
とマシマロ入りココアの入り混じなんとも珍妙
な味が広が

 ダブルの問いには答えないそれが職人の答えだ
職人の優しさで職人の愛情だぼくも意地悪だ
たしねお父さんとお母さんちが好きみたいな
質問は反則だたな仕事とぼくのどちかじなくて
オレと地球を選べだからなオレも地球も職人に
ては比較できる対象ではない職人がどれだけ地球
のことを好きなのかわかていてする質問じなか
よねそれでもうんそれでも
 確認の必要があ
 ダブルはドイツのアルトビルを飲み干して2杯目を
注文した職人はあられの浮いた汁粉を注文する
 いつしかカフには人が増えていたカウンタ席の
社員はロコモコ定食を頬張ていた斜め前方のテ
ル席の社員はトリプルジドアイスクリムを食べ
ている背後のオプンキチンからは皿やグラスの触
れ合う音が聞こえたニンニクを炒める匂いも漂てく
 ダブルは黙たままの職人に手を伸ばした職人のふ
わふわの長い髪をゆくり撫でる
よく泣かなかたねえ
アタシ悲しくなかたもん
 そうかとダブルは職人の髪を撫で続ける職人は目
を閉じて気持ちよさそうに撫でられ続けたドイツの
アルトビルが来てもダブルはドイツのアルトビルを
飲みつつ職人の髪を撫で続けた職人もあられの浮いた
汁粉にふうふうと息を吹きかけ髪を撫でられ続けている
 おそらくとダブルは思職人は気づいている
ダブルがなにかに感づいたことを察しているそしてダ
ブルが謎を解いていくのを楽しみにしているのだ職人
そのものも全貌まではわかていないのかもしれない
だから余計にダブルが謎を解くのを待ているこれま
た職人ひとりがわかていてはラチがあかない事態だか
らだろう
このあられこりこりしていて美味しいよ
ドイツのアルトビルもまろやかな苦味が心地いいよ
職人も飲んでみるか?
アタシはビルより日本酒いまは止めておくね

仕事中だから
ぼくも仕事中なんだけどね仕事中じないと
きなんてぼくたちにないじ
 アハハそと職人が明るく笑ならば飲
もうかなとはいわない警戒しているのだ14年の
つきあいだ間の取り方ひとつで相手の気持ちはわかる
職人はいまはこれ以上気を緩められないようだダブル
の謎解きがうまくいくためには職人はボロは出しすぎ
ないほうがいいらしい
 見え見えなんだけどないいじないか見え見えな
のは職人も自覚しているだろうさそうだね
ところで職人ぼくにつけたGPS機能を取てくれ
ないかな盗聴器ならまだしも監視のしすぎだスト
だよ
いいじやましいことがないなら問題ないでし
気持ちの問題なのいいから早く取どこにつけ
たのさ
取れないよダブルくんの体内につけたんだもん
はい? いつ!
この前ダブルくんがアタシの部屋に来たとき
 ずいぶん前じなんてことをダブルが身もだえ
ているときだ
 テブルを大きな手が叩いたタフだ
うわくりした
くりするのはこちだ! 2人揃て性懲りもな
く社員カフにいるだけでなくいちいちいち
したあげくにかい声でなんつう会話をしてる
んだ! 少しはひと目を気にしろ!
 いわれてみればカフにいる社員全員がダブルと職人
を見ていた管理営業部の前ではモジモジ頭の営業
部員が呆れた顔で立ていたダブルが視線を向けると
みんないちように顔をそむけた技術開発部員とは接
触するなという各部署での通達が徹底しているらしい
 むうと通りすがりに試作装置をポケトに忍
ばせたり試しに新しい試薬を投与したりルアド
レスデタをいただくだけじそれくらいのことで

目くじら立てるなど情けない会社だねえ
だからそういうことをやるなていうんだ!
 タフは額に手をやダブルの向かいの席にど
りと座
ヘリウムが入院したんだて? 大丈夫か? オレが
無茶をさせちまたせいか?
まあね確実にお前のせいだな
すまん数検体でも測定してもらえればと思ていた
だけだ
 タフは素直に深々と頭を下げた
まさか2万個体ちかくをひと息で測定するとは思わな
2週間で2万個体をどうやて測定したんだ?
 そちのほうが疑問だ
ヘリウムくんのやたことだからね測定デタは信
頼していいよ
そうかで? ヘリウムの容態はどうなんだ? 少し
は回復しているのか?
わかんない
 わかんないお前とタフは呆れた口調になる
まさかとは思うが見舞いに行ていないのか?
てないよ? なんでさ
いやいやいやそこは行くところだろう! お前の部
下なんだからよ! 心配じないのか!
医務室の室長は優秀だから心配はいらないね
 医務室の心配じなくてとタフはテブルを叩いた
ダブルは身をのけぞらせるタフがいたいなに興奮し
ているのかダブルにはさぱりわからなか職人
に顔を向ける職人もきとんとした顔つきでみたらし
団子を口に含んでいたほらねぱり妙なのはタフ
んか
違う!
 タフがつばを飛ばす
 まあそんなことよりとダブルはジマンポテトを
口に入れた
検体のおおまかな正体がわかたよ厳密なことは現
在リチウムが解析中だがな
本当かなんだたんだ

アタシそろそろラボに帰らないと
 唐突に職人が立ち上がブルにはまだみたら
し団子とアツアツのほうじ茶が残ているそれでも職
人は慌てて着物と白衣のすそを直している
 おや聞いていかないのか? ダブルは職人に顔を向
ける職人はダブルと視線を合わせないようにして走り
去ろうとしたその前にダブルは声を出した
あれね水ようかんたんだよ
 ぴくりと職人が動きを止めた一瞬ダブルの顔を盗
み見る職人の目の下がこわばていたそしてそのま
ま草履の音をぱたぱたと立てながら職人はカフから出
て行
               4 へ続く NEW NEW
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