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僕の夢は柚子と一緒におじいさんとおばあさんになること、なのに──。
不穏な空気が広がる世界。対応できるのはチーム・シロクマだけ!?
そのキーパーソンが過去が見える高校生の僕ってどういうこと?
奇跡が起きないなら──僕らが起こそう。
青春ラブとサスペンス長編。
全10話。

#高校生 #恋愛 #ちょっぴり異能 #青春ラブ #サスペンス #札幌

■contents
■■ #1 それはきっと君だけの綿菓子(2021/6/3 配信開始)
/ 過去見の力で女子高生・鵡川の過去を見た拓人。彼女の悩みは亡くなったおじいさん。それだけではなく、彼らが生まれる前のおじいさんの記憶、事件の始まりだった。”シロクマ”ってなんだ?
/ 配信先例 yahoo!japan_ebookjapan コミックシーモア ほか

■■ #2 だから消せないコーヒーゼリー(2021/7/1 配信開始)
/ 生徒会長に就任した悪友の木古内。洸太郎の思惑どおりに木古内との時間がほぼなくなって拓人は手持ち無沙汰だ。代わりに鵡川が拓人に「苗字で呼ばないで」と奇妙な提案をしてくる。そんなある日、木古内に拓人はコーヒーゼリーの過去を見て。木古内の東京の叔母とは? チーム・シロクマって? 理不尽な世間に立ち向かう高校生たちの青春ラブとサスペンスの第2話。
/ 配信先例 yahoo!japan_ebookjapan コミックシーモア ほか

■■ #3 彼にささげたプリンアラモード comming soon
/ ロッカの活動を通じてシロクマ文書に辿りついた拓人と柚子。だが、その全貌はなかなかあきらかにできない。そんな中、野々花が拓人と宗助を巡ってクラスの女子とトラブルに。さらに拓人はプリンアラモードに関わる洸太郎の過去を見て。青春ラブxサスペンスの第3話。
/ 配信先例 comming soon

■■ #4 あの日弾けたクリームソーダ
(以降#10完結予定)

■各話共通
/ 読了目安 1時間(2万文字)
/ 通常価格 200pt/220円(税込み)サイトによりキャンペーン価格がございます。


■試し読み抜粋
(前略)
 ただ女の子が困っているだけなら問題なかった。
 肩くらいまでのさらさらな黒髪のちょっと後ろ側、そこにうっすらとなにかが見えた。
 一瞬なのに相変わらずの情報量。──霊とかだったらよかったのに。しかもなんだか嫌な予感までする。舌打ちをして視線をそらす。はらはらと頬を粉雪がかすめた。ふたたび空は厚い雲でおおわれている。まったくもう。ろくでもない。
 すみやかに彼女から離れかけたときだ。
「ちょっとっ」と彼女が顔をあげた。
「見捨てないでよ」
 涙に濡れた顔。「あーえっと」と口ごもって拓人は続ける。
「そっとして欲しいのかなって」
「面倒くさかっただけでしょう?」
「わかっているなら呼びとめないでほしいなあ」
「なんですって」と彼女は声をあらげる。この寒空に雪道でうずくまっているくせになんだか気が強そうだ。本気で面倒くさくなって拓人は彼女に背を向けた。足を踏み出してつんのめる。ワンサイズ大きいミリタリージャケットの裾を引っ張られていた。
「もう、なんですかー?」
「……ひとりにしないで」
「無理。僕には待っているひとがいるし」
「即答でサラリーマンみたいなことをいわないでよ」
 はあもう、と拓人は彼女の隣にしゃがみこむ。心底関わり合いになりたくなかったんだけど、しょうがないなあ。風邪をひく前に手早くすませるか。拓人は彼女の耳に口を近づける。
「駅で待っていても気になっていた彼がこなかった。仲のいい友だちが黙って別のグループと帰っていった。持ってきたはずのブラシがカバンに入っていなかった。購買で最後のメロンパンに手を伸ばそうとしたときに後ろのやつに取られた。残念だったね」
 な、え? と彼女は身を固くする。拓人は続ける。
「朝ご飯の目玉焼きは半熟じゃなかったし、前髪についた寝ぐせはどうやっても取れなかったし」
「ちょっと待って。どうしてわかるの」
「でもそんなことはどうでもいいよね」
「え」
「君が泣いていた理由じゃない」
 彼女が黙る。よかった。自覚はあったみたいだ。拓人は肩をすくめる。
「イライラって連鎖するんだよ。君のおじいちゃんがどういうひとかはわかんないけど、ちゃんと自分で折り合いをつけてよ。八つ当たりされても困る。少なくとも僕にはどうにもできない」
 彼女が拓人を睨みつける。その瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。震える声で彼女は続けた。
「おじいちゃんが死んだってこともわかるの?」
 死んだのか。そこまではわからなかった。だからって僕にできることはないし、と拓人は立ちあがる。ほら、と彼女に右手を差し出す。
「こんなところでうずくまっていてもなにも変わらないよ。考えごとならストーブの前でしなよ。多分、おじいちゃんもそうしろっていうさ」
「なにそれ」と彼女は苦笑する。
「それもわかるの?」
「ただの一般論」
「私の心を読んだのに?」
「読んでないし読めない」
「じゃあ、どうして?」
 どうしてだろうねぇ。彼女を立ちあがらせながら、拓人は胸でつぶやく。あざけりではない。拓人自身、心から思う。なんでだろう。どうしてわかるんだろう。同じような場面に出くわすたびに繰り返し思う。答えはない。けれどしょうがない。事実はひとつ。
 僕は、君の、過去がわかった。
 だからって過去は変えられない。どうしようもない。僕にできるのは、切実に必要としているひとに言葉をかけるだけ。いまみたいに。
「ちゃんと帰りなよ」
 鼻先を赤くして彼女が大きく息をはく。
「……ありがとう」
 あの、と彼女が続ける気配がして拓人は素早く片手をあげた。
「じゃあね」
 もう僕に関わらないで。その合図。名残惜しそうな彼女に背を向け拓人は歩き出す。
 だってきりがないだろう?
(後略)
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■試し読み抜粋
(前略)
「お前って宗助っていうのね」
「いまさら? ひどいな」
 小さく笑って拓人はスプーンを動かす。
「始業式からこれを食べると高一の春を思い出すよね」
「え?」
「ぼんやり窓の外を見ていた僕に、お前ってば、いきなり強引に『食うか』ってコーヒーゼリーを差し出してさ。まだそんなに喋ったこともなかったのに」
 木古内がむせる。
「……覚えていたのか」
「忘れないでしょ、っていうか、なんで居心地悪そうなの」
「いやあの……おれもまだまだだなあって」
「なにが」
 スプーンを口にくわえたまま木古内は窓の外へ視線を向ける。
「たとえば──お前が覚えていてくれて嬉しいとかさ」
「お前のすごいところは、そういうことを恥ずかしげもなくいえるとこだよね。そういうことは僕じゃなくて鵡川《むかわ》にいいなさいよ」
「あー」と木古内は声の調子を落とす。
「そういうのはもういいんだよ」
 拓人は手を止める。
「なんかあったの?」
「なんにもない」
 あわててゼリーを平らげる木古内に、いやあったでしょ、と拓人は身を乗り出した。
「洸太郎さんになにかされた? 隠すなんて柄《がら》じゃないよ。いいなよ」
 木古内は面倒くさそうな顔をして口を尖らせると、「そうだなあ」と眉をあげた。「そこまでいうならいうぞ」と茶化した声を出す。
「やっぱおれはお前が好きだなって思うんだよね。だからいいんだ」
「う、ありがとう。僕もだよ」
「そういうことじゃなくてな」
「なんなの」
 不意に横から「楽しそうね」と声がした。鵡川が立っていた。背後をとおる女子たちに肩までの黒髪を揺らして小さく手を振りつつ「なんの話?」と続けた。
 木古内が軽い口調で答える。
「こいつに告白したのにスルーされたとこ。あ、一個残っているんだわ。鵡川、コーヒーゼリー食う?」
「う、うん。ありがとう」
「ちょっと」と拓人は肩をすくめる。
「どうして鵡川が微妙な空気になるの。まったくもー。木古内が変なことをいうから。心配しないで。僕だってちゃんと返事したし」
「お前には柚子《ゆず》さんがいるっしょ」
 木古内は楽しそうにそう返したものの、さすがに拓人は「え」と目だけで木古内を見た。
「ちょっと待って。え? ……あれ?」
「いやなんでもない。勢いづいただけ。親といろいろあったし。挨拶で緊張したし。お前らなんにもいわないし」
「ごめん。会長、お疲れー。かっこよかった」
「心がこもってねー。もういいわー。ほらほら鵡川、食えよ」と木古内は頬を膨らませて鵡川へゼリーを差し出した。控えめな声で続ける。
「体調はもういいのか?」
「うん。ありがとう」と鵡川はうなずき、「そりゃよかった」と木古内もうなずく。
 鵡川は体調を崩して二週間も欠席をした。終業式にも出られなかったほどだ。欠席理由が雪道で転んで骨折をしたとか風邪をこじらせたではなく「体調を崩した」と言葉を選んだ担任に、これはと拓人は察した。ちょうど拓人の家で綿菓子を食べてから二週間後だ。まさしく柚子が話していた感染症だろう。タイプΔ《デルタ》と命名されていた。なんでもウイルスの形が三角州っぽいかららしい。
 前任の生徒会長はこれに罹患して復学の見込みが立たなくなった。それなのに、と拓人は冷静に鵡川を見る。鵡川が後遺症もなく復学できたのは、洸太郎さんがあの日、車内でなにかしたから? 木古内が無事なのはやっぱり──
(後略)
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■試し読み抜粋
(前略)
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(後略)
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(後略)
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