abstract

短編ミステリ。
メカニックのミモザはモジャ毛に夢中。でもモジャ毛はリカさんに夢中だ。モジャ毛はどうしたら振り向く? 蹴り倒せばいい? その頃、地上ではとんでもない異変が発生。その対応アイテム作成を担当するホタルは試作のたびに社内を半壊する爆発を起こしていた!? 月面で繰り広げられるハイパーコメディ。

about

【RWMシリーズ関連性】
粉雪ダウンバーストの1年前の物語。この事件を予測してホタルが活動をするという、コメディに見せかけた重要エピソード。
(『アルカリ雨問題』)
【原稿用紙換算枚数】100枚
【読了目安時間】30分
イラストはレフカダ氏
2013/12/05 配信開始

試し読み

◇◆試し読み◆◇
ぱり犯人はミモザか
なんの話よ
モジ毛さんがホタルさんに新しいアイテムの開発
を依頼したんだけどホタルさんに白羽の矢を立てたの
がミモザだて噂が流れてる知らないの?
 全然とミモザは首を振どこであの話がバ
レたんだ技術開発部の誰かが管理営業部に盗聴器でも
しかけたか? 誰がそんなことをする? ミモザはヘリ
ウムを見るヘリウムの上司ならやりかねない
 ヘリウムは死んだ魚のような目をミモザに向けた
なんでよりによてホタルさんを推薦したの? すご
く迷惑なんだけどダウンバストだけ? そんなも
のの措置アイテムをあの人に任せたら地球上から雲が
なくなうよ?
意外ヘリウムくんがそういう心配するなんて
するさ雲がなくなたら検体としてウチに持ち込ま
れるガスの濃度も変化するだろ? 標準気体も変えない
すごい手間なんですけど
 ああそういうことかとミモザが言いかけたとこ
ろでヘリウムがミモザのつなぎを引
何?
 ヘリウムは左を指さす技術開発部内をぐると回
て来たらしいホタルが近づいていたひいとミモザは
ヘリウムとともに再び柱の影へと移動した
それでヘリウムくんは何をしてるの? いつも
マシンの前にはりついて検体の測定をしているヘリウム
くんが珍しい
バナナの在庫が心もとなくなたからね
バナナ?
ウチは全員バナナジス中毒だからね二十四時間
飲めるように液体窒素の中にバナナを保管しているんだ
 液体窒素はマイナス百八十六度だカチンコチンに凍
たバナナで作るバナナジそれはもはやバ
ナナスムだろう

美味しそうだね
隣の係の係長も飲みに来るくらいだよミモザも飲み
に来る?
 ミモザはヘリウムの係の中を思い浮かべたそれこそ
性別不詳の同僚にやたらテンシンの高い先輩がいる係
ラボの扉は頑丈だから中の様子は漏れ聞こえないも
のの今このときも爆発騒ぎが起きていてもおかしくな
 何よりすぐさまミモザの噂を技術開発部中に流す上司
がいるこれまたホタルと別レベルで悪名高い上司であ
ホタルの代わりにこの上司の名前を碓氷に告げた
碓氷は三角定規の角でミモザの頭を叩き続けたこと
だろう
残念だけど遠慮しておく
 ヘリウムは抑揚のない声でと答えたほん
の少し残念そうにも聞こえたそのバナナスム
成はヘリウムの仕事のようだ
 よほど美味しいバナナスムなのかなと思
いるとヘリウムが柱の影から顔を出した
ところでホタルさんてさ何周するつもりだ
ろうきからずとぐるぐる回り続けているんだけ
さあ
なかなかバナナを取りに行くタイミングがつかめなく
て困るんだけどな
いつからこんなことやてんのヘリウムくんとい
うかどこにバナナを取りに行くつもり?
社員カフ
通行証持てないじ
だからミモザを待ていたんだよ
 へと振り向くとヘリウムが満面の笑みでミモザを見
ていたきの魚の死んだような目はどこへやらだ
そういえばとミモザは思い出す
 どうしてヘリウムがRWMにいるかそれまたまこと
しやかな噂話があ何しろ月面基地以外に話題がな
い技術開発部だ噂話が大好きな部署でもあ
 ミモザが常人にありえないほどメカニクテクがある

とすればヘリウムには常人にありえないほど検体分析
処理能力があ目にも止まらぬ速さで月面本社に送
られてくる検体の正体を突きとめる力だ
 それだけでも珍しいがヘリウムにはもうひとつの面
があ女癖だこんな死んだような目をして作業し
ているくせになんといわゆる女たらしだたらしい
 二十一歳の若さで離婚を三回経験同時につきあ
女の数は最高で五十人だとかなんとか草食男子を通り
越して絶食男子に見えるところから相手の女は浮気され
ていることすら気づかなかたとかなんとかとん
だ肉食絶食男子である
 ミモザは無意識にヘリウムから距離を取どうし
てあたしを待ていたのよとぶきらぼうに尋ねた
ミモザと一緒に社員カフに行こうかなと思
フへオしていつも通りに転送装置で運んで
もらた方が早いじ
係長が壊した
転送装置を?
うん検体がどんどん出て来るからもう嫌だとかな
んとか言先輩が直しているけどおかげでしばら
く検体がなくて測定もできない
 何をやているんだ第五係自力でマシンを直そう
という姿勢は仕事が減て助かるけどミモザは大きく
首を振る
どうにも直んなかたら直しにいくよ
そのときはバナナジスをごちそうするよ
 わあ楽しみとやけくそで答えているとまたもホタ
ルが二人の前を通り過ぎて行頭を振るわけでも何
かをつぶやくでもなくホタルは白衣のポケトに両手
を突込んで淡々と歩いて行く赤い瞳の焦点が合
いないのでなおのこと歩く姿は生霊のようだ
 思わずミモザはつぶやいた
こんなにぐるぐる回ていたら溶けてバタにな
うよ? どんな理論を立てようとしてんだろう
相変わらず時々ミモザは鋭いなうんそれが目
的かも脳味噌を一度バタ状態に溶かして再構成しよ
うとしているのかも

怖いこと言わないでよ
比喩だよ科学者はよくやるだろ?
あたしメカニクだもん
 いずれにせよとヘリウムは重い口調でうな
そろそろホタルさんやらかすかもね
何を
 ヘリウムは答えず肩をすくめた
                続きは本編で
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