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2012年ペンギンフェスタ参加作品。
単行本・長編SFサスペンス『南極からのしらせ』(エネルギーフォーラム社)のもとになったお話です。本作中の「白瀬隊長」は『南極からのしらせ』の主人公・湊のお父さん、豊(ゆたか)氏。ミスター・ペンペンとミスター・エンペラーは同一人物。

本文(全文)

ペンギン協奏曲
                    天川さく
やあやあ白瀬さん遠いところをご苦労さん
今年もお世話になりますミスタ・ペンペン
 うんうんとうなずくペンギンと第100代南極探検
隊の白瀬隊長は握手を交わした
 
   ***   ***   ***   
 
 プチ氷河期と呼ばれる氷河期が地表を襲てはや5年
温暖化で騒いでいたのがウソのように地表は雪と氷で閉
ざされた太陽活動低下が原因だ死者行方不明者は1
0億人にのぼり資源の枯渇も深刻だ
 そんな人間に救いの手をさしのべたのがこのコウテイ
ペンギンミスタ・ペンペン
 ミスタ・ペンペンは言葉を話すことができた
 
え? フツだよみんな喋れるよ人間と喋りたが
らないだけだよぼく? ぼくは別にどうでもいいか
て思てさ
ですがミスタ・ペンペンペンギンのかたがたはど
うも人間をこころよく思ていららないようで
わたしもここに来るまでずいぶんと妨害工作を受けまし
それはよくないなああとでよく言ておくよ
 お願いしますと白瀬隊長は頭を下げる
 自分の半分の背丈しかない相手に頭を下げる
 しかも相手はペンギンだ
 妙な気持ちももちろんわいたけれどもここはそんな
いち個人の感情を出している場合ではない世界の命運
がかかているのだ
 
 たかがペンギンとあなどるなかれ
 このペンギンたち異常なほどに強か
 どんな銃器でせめたてようとびくともしない

すぐさま潜伏してかく乱攻撃だ南極大陸での攻防はい
うまでもなく海上では手も足も出なか自然を知り
尽くした行動だ人間の理屈がまるで通らない
 大海原でクジラを捕りつくしていたころがウソのよう
 ああ今までおれたちはペンギンのいや人間以外の
動物のなにを見てきたのか動物たちが本気を出せば
これほどたやすく人間の威厳など足元から崩れ去るのだ
 世界中の生き残た人間たちはペンギンの所業に震撼
した
 それでも頼みの綱は南極大陸
 いつ終わるともしれないプチ氷河期を生き残るには
どうしてもあの豊富な資源が不可欠だ
   ***   ***   ***   
それであの今年も資源を分けていただけるのでし
うか
いいよただし限度をわきまえてよね必要な分だけ
ズルはなし頼むよぼくたちからの条件はそれだけだ
耳が痛いですなたしかに我々人間はあればあ
るだけ使てしまう便利を覚えると不便に戻れない
そういう習性がぬぐい切れない
はははこれで懲りたでし必要以上に捕るとろく
なことはないのさ人間も欲を捨てればいいのになあ
それがなかなかできないようでこのプチ氷河期
もいつまで続くかわからないのにとよこせ
わめく輩が多くて困ります
まあアレだよそう悲観することもないんじない?
 あと1年てトコかなプチ氷河期終わるよ
どうしてわかるんです?
太陽だよ見ればわかるじ活動が活発にな
きてる
分厚い雲に覆われて人間の肉眼やデタではよ
くわからないのですが人工衛星も制御不能になて久
しいですし

ホント? それは不便だねえ
たくあなたがたにはかないません
でもさなにに一番かなわないてさ
 地球でしとミスタ・ペンペンはいたずらぽく
地球はぼくらの都合で動いてはいないからね
たくもるとおりで
 ミスタ・ペンペンと白瀬隊長はそろて空を眺める
 ペンギンと人間の奇妙な協奏曲
 人間の人口が頭打ちになたいまあたらしい関係が
結ばれようとしていた
                    
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